紅葉の侯、自然の美しさを満喫出来る空間に生活したいという欲望は私達を行楽へと駆り立てる...のですが、逆に大自然の中から居住空間をガラスでものの見事に切取った家があります。
「ガラスの住宅」という言葉から多くの建築家達が思い浮かべる住宅建築は20世紀の建築史にたぶん3つはありますが、その中でもまず最初に思い浮ぶのが巨匠ミース・ファン・デル・ローエの1950年の作品「ファンスワース邸」でしょう。
アメリカのイリノイに建つ驚くほど緻密に設計されたその家はたった2枚の盤と8本の鉄骨の柱で、住まいを軽々と緑の中に据えます。
自然の中にこれ程までに溶け込んでいるのに、自然とこれ程までに対峙した不思議な形は、後にも先にもこの1作だけ。その賛否はどうあれ、築後55年を経た今でもその空間感は衰える事なく、20世紀の住宅建築の力強い金字塔の1つとなっています。