今は亡き巨匠岡本太郎氏の言う「空間とは真空か充満のどちらかである」との事、
じゃあ建築家の目指す空間とは真空か?充満していたら人が住む空間が無くなっちゃうじゃん!……さにあらず。なのである
イタリアのロマネスクの教会の魅力は壁にあります。その圧倒的に充満している空間に対して、日本の古い木造の建築は真空を感じさせるのです。
コンクリート打放しを見ていると僕はこの「満実に充満している空間」という言葉を正に具現化している様に思います。
コンクリート打放しとは、もともとは打ってしまえばそれでおしまいの「うちっぱなし」だったはずなのですが、だんだんとやることが増えて「うちはなし」となってしまいました。もともとは低価格に住宅を作る事が出来得る手段だったのですが、今や「高級な仕上げ」になってしまい、コンクリート打放しまがいの壁紙さえ売られている位です。
鉄筋コンクリートをRCと呼びますが、その構法には大雑把に分けて、柱と梁による構造である「ラーメン構造」と、壁で支える「壁式構造」とがあります。
躯体費という鉄筋コンクリートに掛る費用は坪あたり20万円位と言われてます。
型枠は専用の表面にコートがされているものを使う事が多く、あの有名な500円玉位の丸いものが表面にぽつぽつついているのは「ピーコン」という名前で、もともとは型枠を支えているプラスティックの部材を抜き取ったあとの穴をモルタルで塞いだものです。
このピーコンの位置に命を掛けている建築家はいちいち図面で指定しています。これを「ピーコン割り」なんぞと言います。
照明器具、コンセントやスイッチ類の位置も型枠を組む時にばっちり決まっていないと、後から「あ、ここにコンセント付けたい」と言われても電線を露出にしない限り無理です。
また、コンクリートは防水性能があると思われがちですが、決してそうではなく、撥水剤という水を弾くものを塗っておいたり、防水性を高める為に特殊な薬を混ぜたりします。
断熱性能はまるで無きに等しく内外共に打放しとした場合には、断熱のしようがないので夏はとても暑く冬は結構さむいものです。大抵はそれを覚悟のうえで、「コンクリート打放しの家に住みたい」と言うのですが、それが受け入れられない場合は、外か内かどちらかにすべきです。
卓越した補修方法の出現によって、表情の無いきれ〜な打放しが、至る所に登場する様になりましたが、やはりそこには、満実に充満したコンクリートのエネルギーは感じ取れません。一度打ってしまうとおいそれと修正は利かず水墨画を描く様な緊張感がきっと打放しのコンクリートの生命力なのです。
こんなどうしようもない「コンクリートうちっぱなし」ですが、何故かど〜しょもなく好きになってしまう不思議な魅力の持ち主なのです。