「住宅とは住むための機械である」とは前世紀の巨匠ル・コルビジェの言葉ですが、彼等の影響力は大きく、以来「モダニズム」という、鉄骨、ガラス、コンクリートなどを使った近代建築は全世界に広まりました。美術を学ぶ学生にとって彼等の教育機関「バウハウス」が世に送りだした幾何学的で無機質なテイストのデザインは、決して避けては通れないものとなりました。
それに対して、地域的特色のある工芸や建築を近代的な工業生産技術で作る事を考えたデザインは「アーツ&クラフツ」という呼び名から、やがて「ポストモダン」と呼ばれる様にもなり、再び工芸的な有機的空間が出現しました。「機械に住むなんて御免だ」と言わんばかりに。
両者の戦いは手を変え、品を変え繰り返えされています。現在はどちらかというとやや「モダニズム」の方に人々の嗜好があって来ているのではないでしょうか?
実は、日本の「障子・ふすま・衝立・屏風・畳・床の間・土間・縁側・庇」といった空間装置はモダニズム建築にも大いに影響を与えています。禅やわび・さびの感覚等は無機質な工業的空間にある種の精神性を与えました。「less is more」などという言葉がもてはやされ、過度の装飾は品のない姿であるとして嫌われたのです。
新年に門松を立てて気持ちを新たにする。マンネリに陥り勝ちな日常空間に新鮮さを取り戻す知恵ですね。昔の人はこの対比を「ハレ」=フォーマルと「ケ」=カジュアルという言葉で表わしていました。
「ハレ」と「ケ」を上手く使い分けるには、建築が主張し過ぎないので、きっと「モダニズム」の方がベターなのです。