建築家レーモンドの自邸は1924年に東京に建ちました。それは日本のコンクリート打放し住宅としてはかなり草分け的な家です。
コンクリートを打つ技術もあまり発達していなかった当時の人々の目には、きっとものすごく
異様な家に映った事なのでしょう。今では珍しくないフラットルーフが瓦屋根の建ち並ぶ町並みに異彩を放っています。大きなガラス窓は、コーナーに柱が見当たりませんし、中庭を囲んだ平面計画や、写真には映っていませんが、コンクリート造の螺旋階段までもがまるで「モダーン」の教科書です。
80年経った今、建っていたとしても十分に斬新な家である事は古びた写真からでも伺えます。当時のコンクリート住宅は決して安価ではな
かった事でしょう。もし今だったら、この家は当時よりも格安に建設が出来るのだろうなぁと思うと、80年の歳月に感謝をしたくなってきませんか?
それにしても、中庭に聳える一対の松が、それでもここは日本であると主張していて、何だか楽しい思いがします。